2019/5/15 動く家に住みたい

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「Mobitecture:モビテクチャー」という言葉がある。
Mobile【動く】 + Architecture【建物】の造語で、動く家、または住まいのことである。私がこの言葉を知ったのは、「Mobitecture 動く住まい図鑑 レベッカ・ローク 著/八木恭子 翻訳」を本屋で偶然見つけた時だった。
元々ミニマリズムに基づいた生活に憧れており、かつ、一箇所に定住することがどうも苦手で常に引っ越したい欲が高い私にとって、モビテクチャーという概念はまさに探し求めていた理想の住まい・生活像だった。

< Mobitecture 動く住まい図鑑より引用 >
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この本には280以上のモビテクチャーの写真と、それぞれに興味深い制作意図が掲載されている。
政治的や環境的に移住を余儀なくされた人達や、ホームレスの人達に対して新たな住居を提供するという社会問題解決方法としてモビテクチャーを活用した事例や、 都市空間の公共スペース、使われなくなった土地の有効活用法としてモビテクチャーが大いなる可能性を秘めていることが示されている。 またそういった意図とは関係なく、私のような”放浪的な生活”をしたい人のための図鑑でもあった。興味があれば読んでみてほしい。
ここでは、なぜ自らの生活にモビテクチャーを取り入れたいのか、その理由を書こうと思う。

まず、冒頭でも述べたように”ミニマリズム”に基づいた生活ができるという点だ。
あえてミニマリストな生活と書かないのは理由があるが、それについて書くと長くなるので別の記事にまとめる。
モビテクチャーに住めば、スペースの関係で極少量の物しか持てなくなる。
暇さえあれば断捨離をしている私にとって、これはとても喜ばしいことだ。 スペースが限られていることは、人生の豊かさに繋がると思う。
惰性で持っているもの・捨てるに捨てられない思い出の品々・年に1回使うかどうかの日用品・・・
それらの物達から解き放たれ、本当に必要で好きなものしか持たざるを得ない状況に自分を追い込める。最高だ。 次に何と言っても”家が動く”という魅力だ。旅をしながらにも関わらず、自分の家で自らのベッドで心から安らぐことができる。
この世で1番好きな場所が自分のベッドな私にとっては、またもや最高な面である。

最後に金銭面的な話だ。最近、結婚した高校からの同級生が30年ローンを組んで新築マンションを購入したという。
高校時代に一緒にバカばっかりやっていた友人が、その大きな決断と行動をしたことに驚きと尊敬の念を抱いた。
私は金融ローンを20-30年組んで一軒家やマンションを購入する度胸が全くない。今後もその度胸が出てくる気配すらない。 病気や怪我をしてローンを払えなくなってしまったらどうしようとか、購入したマンションや家の資産価値が下がってしまったらどうしようとか、 そういう心配ばかりしてしまって、家を買うということにかなり抵抗がある。

しかしモビテクチャーならそういった不安が、全くなくなるとは言えずとも、少し軽減される。 マンションの頭金ほどの金額で手に入るし、水・電気・ガスなどの日常生活に必要なインフラも工夫すればどうにかなる。 そしてモビテクチャーに飽きてしまえば、売ってしまえばいいのだ。 ある種類のモビテクチャーは年月が経つとアンティーク品としてプレミアがつき、買った時より高く売れる場合もあるという。投資効果もある可能性もあるのだ。

ここまでモビテクチャーの魅力ばかり話したが、無論デメリットも多く存在する。 最大の問題点は、モビテクチャーを自宅にするという考えを持っている人が極端に少ないということだ。 最近キャンピングカー展示会なるものに行って、キャンピングカーの最高級ブランドと言われているエアストリーム社のキャンピングカーを内覧した。 まさに私が描いていた”動く家”だった。ガスコンロにオーブン、冷蔵庫、シャワー、トイレ、洗面台、ソファ、クイーンサイズのベッド・・・ 晴れた日には、内蔵された日よけを出して外でお茶をすることもできる。最高のモビテクチャーだった。
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しかしエアストリーム社を始め、他のブランドが出しているモビテクチャーは、”田舎へ行って自然を体験しながら旅行を楽しむためのもの”であったのだ。 決して私のように”表参道の駐車場に止めて、毎日モビテクチャーから会社へ出勤”という考えの人はいなかった。 エアストリーム社の人にもこの野望を伝えると、「そんな方は聞いたことないですね・・・」と言われてしまった。 私は別に、自然を体験するためにモビテクチャーを利用したいわけではない。 都心に住み、普通のOLとして生きていきたいのだ。ただ、自分の家が動く家にしたいだけで。


この野望について、色々とキャンピング展覧会にいらしていたベテランの方々に聞いてみたが、 「行政対応が厳しいかも」「住民票はどうなるかな」「家としての固定資産税とかは?」というなんともリアルな心配をされてしまった。 確かにインフラにしても、電気は発電機やソーラーパネルの設置で、ガスはプロパンガスの設置でどうにかなりそうだが、 市水の供給や下水処理は、都会では難しそうだ。まだ行政には確認していないが、「なんか家をキャンピングカーにしたいとか変なこと言う奴が来た」と思われること請け合いだろう。
しかし問題があっても、いつか私は動く自分の家から会社へ出勤することが夢だ。 そして土日は気が向いたら、どこか近くの田舎に行って星空を見ながら自分のベッドで寝る。 そんな日々を送ることができればなあ・・・と、今日も動かない家の中で悶々と考えている。

おまけ:おすすめの記事です。
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