2019/5/26 理想のミニマリズム

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一時期流行した「ミニマリスト」と呼ばれる人達がいる。
ミニマリストなる方々は、一般的な家にあるもの(TV、ベッド、カーテンなど)を持たず、物を極限まで減らして生活している。 中には、衣服や靴などのファッションまで制服化し、物に依存しない生き方を徹底している方もいるようだ。

<ミニマリストの方々の家・生活>
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私も以前書いた記事の中で触れたように、暇さえあれば断捨離を行うタイプの人間である。物を捨てることは快感であるし、物で溢れかえる部屋を見ると恐怖すら覚えるので、恐らくミニマリスト側の人間なのだろうと自覚している。 だが、ネットに溢れるミニマリストの方々が書かれた記事を読んだりすると、価値観が異なるところがあったりして面白い。ここでは私の理想のミニマリズムについて書く。


まず、ミニマリズムについて定義を引用する。
--- ミニマリズム (英: Minimalism)とは、完成度を追求するために、装飾的趣向を凝らすのではなく、むしろそれらを必要最小限まで省略する表現スタイル(様式)。「最小限主義」とも。-wikipediaより---

過度な装飾を避け、必要最小限までシンプルにするスタイル、それがミニマリズムだ。 もちろん人によって必要最低限のハードルも変わってくる。しかし家の中のベッドやソファー、TVなどを捨て、物を極限まで減らせばミニマリストなのかと問われると、なんだか違う気がしている。
ミニマリズムは、あくまで人生をより良く生きる手段にすぎない。その手段を有効に利用するためには、物を極限まで減らす前に考えることが重要だと思う。 自分の人生には何が必要で、何が不必要なのか。考えるべき対象は物に限らず、思想や考え方、人間関係など、自らを取り巻くあらゆる環境が対象となる。 要・不要がはっきりすると正しい自己認識が高まり、雑念に惑わされることなく、自分の精神状態を安定させることができる。 敢えて大袈裟に言うと、ミニマリズムのスタイルに従うことは、自分の人生を見つめることにつながるとすら思っている。


よって、ネットに溢れるミニマリストの方々が行なっている「ベッドは寝袋で代用できるから、場所もとるし捨ててしまおう!」というのは、私の考えるミニマリズムと根本的に違う気がするのだ。ガラ空きの部屋に住むことがその人にとって最高に幸せなのであれば、極限まで物を減らすべきだろう。しかし考えもなしに物を断捨離すればミニマリストになるわけではないはずだ。 手段が目的になってはならない。真のミニマリストとは、人生をより良く生きていくための手段としてミニマリズム思想を踏襲する人のことではないだろうか。

話は変わるが、日本の茶道について少し触れたい。 約3平米、4畳半の茶室で行われる茶事は、個人的に究極のミニマリズムだと思っている。 茶事が行われる際、亭主(ホスト)は客人に心から楽しんでもらえるよう準備するのだが、その茶事で客人に伝えたい思いを、掛け軸や生花、お菓子や道具などの細部にまで込めるのである。 それは決して客人の教養を試すためではない。どんな茶事でも一生に一度しかないと心得て、茶事に参加してくれる客人に対し心からの誠意を尽くすためである。

日本における茶道のスタイルを確立させた千利休は、侘び寂びなどの文化に通づる数々の教えや思想を残したが、利久七則という教えをここでは取り上げる。 「茶は服のよきように、炭は湯の沸くように、夏は涼しく冬は暖かに、花は野にあるように、刻限は早めに、降らずとも雨の用意、相客に心せよ」 それぞれの意味については専門の方々へ解説を譲るとして、千利休はこの7つが茶道の心だと説いた。 茶事ではこの7つを体現するために、多くの茶道具があり、生け花があり、作法があり、亭主と客人の互いが誠心誠意を尽くす必要があるのだ。 4畳半の狭い部屋で行うシンプルなお茶会に、これだけ深い意味合いをもたせることができるのは、まさにミニマリズムスタイルの極みだと思っている。


ミニマリズムに対する想いはここまでにして、以下は蛇足だが私の実生活(具体的な断捨離の方法)について書く。

私が物を断捨離する基準は、ときめく・ときめかないなどの心理的な感情ではない。 そもそも、ときめかない物は買わないので家に存在しないからである。
まず収納スペースに対して、理想とする量の物の絶対量を決める。
私は収納スペースをパンパンに埋めるのが好きではない。クローゼットでも本棚でもびっしり並んでいるよりも、" 遊び"のスペースを必ず確保して余裕をもたせた状態が美しいと思っている。 つまり手元に残しておきたい物を中心に考えて収納するのではなく、収納スペースの大きさによって保持できる物の量が決定する。

どんなに気に入った服達であっても、住んでいる家の備え付けクローゼットが狭ければ優先順位をつけて捨てる。これが私のやり方だ。 収納スペースを開けた時に、常に美しい状態でありたいのだ。
私はズボラな人間なので、多くの物を抱えると整理整頓が面倒になるであろうことは分かりきっている。 収納スペース内の美しさを保つためには、物を減らす必要がある。美しさの追求のために断捨離が必要なのだ。 好きな物をゆとりのあるスペースに収納する。収納できないものは、どんなに気に入っていても捨てる。これが私のスタイルだ。

以上、とりとめもないがミニマリズムについて思っていることを書いてみた。

<追伸>

茶道関連の話は、できるだけ正しい情報を集めたつもりだが間違っていたらすみません。 茶道が究極のミニマリズムであると思ったきっかけは、私の母が教えてくれた茶道の知識の受け売りが発端です。 なので、「こんな考え方している茶道素人もいるんだなあ」と寛容な心で読んでいただければ嬉しいです。


おまけ:参考です。
裏千家公式HP お茶の心ってなんだろう

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